「エンジニアのための時間管理術」を読んで
2006年10月の初版なので、IT関連の書籍では少し前になるのかもしれないが、ブクログでずっと"読みたい"にマークしてあった、「エンジニアのための時間管理術」を読んだ。
- 作者: Thomas A. Limoncelli,株式会社クイープ
- 出版社/メーカー: オライリー・ジャパン
- 発売日: 2006/10/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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主にシステム管理者(書籍内ではSA:System Administrator)向けに書かれた少しマイナーな書籍なのかもしれないが、今の自分の仕事との関係も深く、とても楽しみながら読めた。内容も技術書と言うよりはライトな読み物になっており、読みやすく、数日の会社の往復と、帰宅後の数時間でさらっと読むことができた。
印象に残った箇所として、
- 能力は重要な作業のために温存しておく(p5)
頭のなかをなるべくクリアにしておく。記憶しておくべきことは外部ストレージ(書籍ではPDA,PAAだが、現代ではクラウドなのだろう)にまかせておく。
- 集中と割込みへの対処(2章)
割り込みは必ず生じるものであり、その対処に工夫する。委任、記録、実行がキモ。また、同僚と相互不可侵条約を結び、時間帯によって、割り込みに対処する担当を分けるなど興味深い。(なかなか実践できないケースが多いかもしれない)
集中への対処して、集中できる時間をコントロールする、例えば早朝の朝1時間早く出社する。その他、気の散りやすい環境を排除する。IM通知、メール通知、他のウィンドウを見ないためにWindowsスクリーン切り替えのアプリなど。
- 自分の記憶力を信用しない(p58)
PDAに記録する。そして、持ち歩くとのこと。このことは一日前の自分は別人と考えている自分の考えにもしっくりきた。また、著名な宋文洲さんに至っては1分前(1秒前?)の自分は別人ということらしいので妙に納得感があった。
- サイクルシステム(作業リストとスケジュール)
毎朝10分で一日の予定を立てる。その際に、優先度をA(期限が今日で今すぐ終わらせる必要がある)、B(期限が近づいている)、C(それ以外)で分類し、必然的にタスクを割り当てる。そして、その日のしごとが終わったら、すべて翌日以降のタスクに振り返るとのこと。とても納得。
- サイクルシステム(カレンダーの管理)
カレンダーは仕事、プライベートで一つ(に見えるよう)にする。カレンダーツールに記憶させる。また、1年の閑散を読み、スケジュールを調整すると良い。
- サイクルシステム(人生の目標)
仕事、プライベート両面で、ひと月、1年、5年で目標をリストアップし、計画する。定期的な見直しも必要。
- 優先順位
特にプロジェクトの優先順位が印象深かった。どこかの会社でも似たようなことをやっている気がする。
大きな成功を収めている企業では、困難だが必要なプロジェクト(カテゴリB)に挑戦する社員を優遇するような経営努力をしています。
- 上司からの要求
上司からの要求は優先度が高い。
なぜこのことが重要なのでしょうか。あなたの次の給与査定をするのは上司です。これ以上何かいう必要があるのでしょうか。
もっともであるが、少し釈然としない。自分と上司の考え方、知識レベル、考察の深さなどに敬意を払えていれば、納得もするのだろうか。また、同時に上司のマネジメントが必要とも言及している。
- ストレスの管理
ストレスに上手く対処するよう書かれている。そして、休暇は会社からのプレゼントではなく、リラクゼーション管理やストレス解消プログラムの一環とも。ピープルウェアにも通じる箇所もあり、大いに納得。
- 電子メールの管理
電子メールは理想はワンタッチ(閲覧)で削除。メールボックスに溜め込まない。最近はGMAILがあるので、そうでないケースも多いが。
- 時間の浪費
時間の浪費とは、費やした時間に対する利益の割合が低い活動を指す。こうした活動は効率よくおこ泣くことを試みることよりも、排除したほうがよいだろう。
大いに納得。やらないことで生産性を向上。 また、「SAにとっての究極のタイムマネジメントテクニックとは、優れたITインフラストラクチャである。(中略)つまり、床を拭くのをやめて、水濡れしている蛇口を修理する事ができる。」とも。
- 文書化
文書化によるメリットは自明だと思う。仕事を他の人に振りやすくするともある。 顧客視点のリポジトリと社内ITリポジトリをWikiで管理するのが良いのではと。
- 自動化
やはりこの手のSYSADではよく話題になる自動化の重要性。
そして、最後の「おわり」が最も印象深かった。
この手の話題では、たいてい新たに創出できた時間を「付加価値の大きい頭の使う仕事に当てよう」、「今までできなかった仕事にチャレンジしよう」みたいな、仕事の生産量を増やすことが正しいというような方向へ収束することが多いが、本書はストレートにそれらと異なっていた。
(タイムマネジメントをして創出できた)
「新しい」自由時間をどうするか
週40時間の労働を宣言し、家族との生活を取り戻してください。
週に40時間働いたら家に帰る。
大切な相手と過ごす時間を増やす
子どもと過ごす時間を増やす
両親やあなたの人生において重要な人に電話する。
...
リタイアした後、または極端には人が息を引きとる直前に、「もっと仕事をしておけば良かった」と思う人がどれだけいるのだろうか。もちろん仕事は人生に必要不可欠なもので、有意義なことも多いのだが、多くの人は人生の時間の大部分を仕事に費やしており、十分であろうと思う。
その点で本書は、人生を豊かにするためのエンジニアの処世術タイムマネジメントみたいなものなのかと感心し、大いに共感できた。